のど飴戦士アイバチャンSeason11.5 【同じ空の下、紡ぐ物語〜小話集⑤】

⑤小話〜ユーゴのお散歩








※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は実際のものとは一切関係ございません。
あらかじめご了承ください。
















(サラサラサラ…)












町を流れる川。
魔界と繋がってるなんて噂がある。







多分その噂は本当。
魔物のユータくんが発動させた魔法によって、俺の身体は眠ったまま、魂だけが魔界に引き込まれた、なんてことがあったらしい。




その時の記憶はすごくあやふやなんだけど。










魔界に行くときはこの川に引き摺り込まれた…ような気がする。

ジェシーに助けられて人間界に戻ったときにもこの川の底から上がってきた…ような気がしたんだよな。















なんかそこの記憶だけはうっすら覚えてる。










言い伝えって根拠がないようで意外と合っているような気がする。









あのときどんなことがあったんだっけ?
面白い夢を見たから誰かに教えたかったのに、朝になったら思い出せない時みたいだ。




















(サラサラサラサラ…)






そうだ。






この川、人が入ると絶対に流され、溺れてしまう。
ただし子供が落ちると助かりやすく特殊能力が与えられるって…それも噂。





タカヒロは動物と話ができるし、ダイキくんはサッカーが天才的に上手い。
坊丸くんは動体視力が異常に良い。





やっぱり。
根拠がなくたって、裏付けとなる現実が何よりも強い。






俺は最近ここでトレーニングをするようにしている。
川には橋がかかっているけど、歩幅と同じくらいの間隔で大きな石がポツポツと埋まっている。

飛び石的な。





そこを落ちないように渡るっていう緊張感MAXな脚力トレーニングなんだけど…。








俺は落ちても何もないらしい。
ジェシーと川遊びしたことあるけど足首くらいまでが濡れただけ。







噂にもう1つ追加すると、既に魔物から魔力を受け継いでいる人にとっては、ただの浅い川だということ。





俺はジェシーの魔力の器みたいなもので、常にジェシーの魔力を体内に宿してある。
だから川に入っても溺れることはないし、新たに魔物の特殊能力を受け継ぐこともない。



ジェシーの魔力、俺も使えたらいいのに。
ここに魔力があるってわかってるのに、自分ではどうにもできない。
ジェシーが魔力を増やしたり変化させたり、色々やってくれないと俺は魔法を使えない。








俺はもっと強くなりたいし、もっと人の役に立ちたいと思う。

俺、弱いから。
これといって能力がないから。

みんなの足を引っ張ってしまうことが多いから。

魔物に捕まって、襲われそうになって、助けてもらうことばっかりだから。






悔しさは全部トレーニングに注ぎ込んで、
身体作りのための筋トレは毎日誰よりもやるようにしてる。







…全然筋肉付かないんだけどね。
師匠たちもジェシーも、俺の身体を見ては



"また痩せたんじゃない?"




って心配しちゃって。
筋トレのつもりが、ただのダイエットになってるんじゃないかって俺も心配になる。








ジェシーはいいな…魔力使って戦える。
俺、なんでヒーロー適性試験受かったんだろ?
食べたものの影響で採血の結果が変わっただけなんじゃないかって思う。



川のほとりに座り込み、心地いい川のせせらぎを聞きながら考え始めた…



















(サラサラサラサラ…)













色々悩んでたけど、川のせせらぎを聞いていたらなんとかなるような気がして。
根拠はないけど。











素敵な音だな。











これを音楽に表現できたら、たくさんの人が俺と同じ気持ちになるだろう。









ベースで弾くとしたら…こんな感じかな?
メロディはどんな感じになるだろう。








今度ジェシーにもこの音を聞かせてみよう。







音楽の才能に溢れているから、いいアイデアを出してくれるに違いない。









そうして作った曲を配信して、動画の視聴回数伸びて、俺たちのバンドが有名になったりして…


メジャーデビューのお声なんてかかったら、内定貰った就職先どうしよっかなぁ?…








あれ?俺…何考えてたんだっけ?
何か悩んでたような気がする。









まぁ、いっか!











…てかさ。





魔物が人間として生活するための研修って、どんだけ時間かかんだよ!








ジェシー早く帰ってこーい!



















(終)

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