のど飴戦士アイバチャンSeason11.5 【同じ空の下、紡ぐ物語〜小話集⑨】
⑨小話〜僕の家族
Season11 最終章のちょっと前からのお話…
※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は実際のものとは一切関係ございません。
あらかじめご了承ください。
「せんせぇまた明日なー!」
「せんせい、バイバーイ!」
「せんせー、さよーならー!」
『また明日な。』
幼稚園の降園時間、次々とみんなが帰っていく。
迎えにくるお母さんもいれば、少し遅れるお母さんもいて、お母さんが子どもと一緒に通園するには少し遠いからバス通園してる子もいる。
迎えのお母さんが次々と来て、子どもたちが帰って行く。
「せんせぇ、バイバイ〜!」
『ほな、また明日な。』
「お母さん、今日なぁ!
お絵描きして遊んだんやで!そんでな…」
「あら、良かったやん!
おうちに帰ったら見せてなぁ!」
お母さんやお父さんと笑顔で帰って行く園児を見て微笑ましくもあり、羨ましくもある。
そりゃあ、そうだ。
僕には物心ついたときには両親はいなかった。
今日あった出来事を教えたり、悲しいことがあったときに言いつけたり。
それら全てを受け止めてくれたのは両親ではない。
僕を育ててくれた両親の知人だった。
それでも幼ながらに遠慮してしまって、現在までの60年間、言いたいけど言えないことも多かった。
僕、仕事では23歳って言ってて、人間の23歳のフリをしてるけど。
本当は60歳なんだ。
年配のように感じるかもしれないけど、僕、人間…じゃないからさ。
半分は魔物の血が流れている。
人間年齢に換算したらまだ6歳くらいの子供なんだぞ。
寂しいような、悔しいような、そんな気持ちを滲ませながら教室に戻ると、バスの送迎待ちの園児たちがお絵描きをしている。
ダイゴ
「じょうずに書けてるね。」
園児
「うん!アンパン男!
先生も好きでしょ?」
ダイゴ
「うん、詳しくないんだけどね。」
園児
「アンパン男はね、正義の味方なんやで!
困ってる人がいたら助けてあげるんや!
バイキン男が悪いことしてたらやっつけてくれる!
お腹がすいてる人がいたら自分の顔をちぎって食べさせてくれる。
すごく優しいんや。」
そんな話なんだ。知らなかった。
前に、僕を育ててくれた人が言ってた。
"お前の母ちゃんはアンパン男のアニメが大好きだったんだ。このパンは困ってる人を放っておけない、人の為なら自己犠牲も厭わない。誰にでも優しくできる。
あいつもアンパン男みたいな奴だったな。
まぁ、アンパン男と比べたら全然弱っちいけど。"
園児たち
「せんせぇ、大丈夫?泣いてるん?」
「せんせぇ!大丈夫?」
「せんせぇ!泣かないで!」
「せんせぇ、ティッシュ使いっ!」
ダイゴ
「あぁ、みんなごめんな。大丈夫。
昔のこと思い出しちゃって。
ありがとう、みんなアンパン男みたいに優しいなぁ。」
園児
「ぼくアンパン男になりたいの!」
ダイゴ
「おー!凄いやん!」
園児A
「せんせぇ、ぼくもアンパン男になりたい!」
園児B
「すごーい!
私もお花屋さんしながらアンパン男になろうかな?」
園児C
「僕は町で魔物退治する人を助けたいから、アンパン男よりすごくなる!」
ダイゴ
「みんなすごいねー!
先生、将来は凄い人の先生だったんだよって自慢できちゃうね。」
幼稚園の先生
「みんなー、バスに乗って帰りますよー。」
園児たち
「はーい!」
みんな、あったかいな。
人間って、いいな。
僕に魔物の血が通ってなくて、完全に人間だったなら。
こんなに苦労してなかったのだろうか?
でも僕は。
魔物の父さんも、人間の母さんも大好きだ。
覚えてなくたって、会ったことなくたって、両親のことが大好きだ。
だから僕は、魔物と人間のハーフに生まれたことを誇りに思って生きていきたい。
そして。
両親のこと、絶対見つけて入籍してもらうんだ。
そうすれば。
父さんは逮捕されずに済む。
母さんと僕は引き離されずに済む。
僕の家族みんなが幸せに暮らしていける。
この悲しい現実を塗り替えるために。
僕はこの運命に抗い、戦い抜いてみせる。
@数日後
園児たち
「せんせぇ、幼稚園やめちゃうの。」
「さみしい。」
「えーん、えーん。」
ダイゴ
「みんな、元気でな。
また会えたらええな。
そのときまで、笑顔でおるんやで。」
園児たち
「はーい。」
園児の保護者
「おまたせー。帰るわよー。
先生、今までお世話になりました。」
ダイゴ
「いえいえ、こちらこそ。」
…
もう退職かー。
荷物をまとめて。。。これでよし。
(ガラガラガラ…)
「せんせぇー!」
「センセェー!」
ダイゴ
「あれ?忘れ物かな…って!
あなたたちですかw」
ジェシー
「ゴメンゴメン、ユーゴが突然迎えに行って、ついでにびっくりさせちゃおうって。」
ユーゴ
「園児の真似しようって言ったのはジェシーだかんな。」
ダイゴ
「迎えに、来てくれたんですか?
わざわざ…」
本当にびっくりした…。
退職して横浜に引っ越すことになったけど、そちらでお世話になるお兄さん達。
人間のユーゴくん(21)
魔物のジェシーさん(2500、人間年齢25歳)
ジェシーさんは僕の親戚らしく、もしかすると僕のお父さんかもしれない、らしくて。
まだ確信は持てないけど。
ユーゴ
「ほぉら、一緒に帰るぞ。」
ジェシー
「横浜までは遠いよ〜AHAHA!」
ユーゴ
「ウチ、狭いからさ。
帰ったら荷物置くとこ少ないけど。
明日からの検査入院が終わるまでにはちゃんと俺たちのもの片付けておくもんな♪
ジェシー頑張れよ♪」
ジェシー
「が、がんばるよぉ!」
ユーゴ
「1人暮らし用の部屋で男3人はさすがに狭すぎるからさー、そろそろ引っ越しでもしようかねー。」
ジェシー
「狭くていいじゃんよー。
どこ見てもユーゴがいるなんて最高じゃん!」
ユーゴ
「それじゃお前がうるさくて俺が困るのよ!
ダイゴ〜ごめんな〜w」
「AHAHA」
「ふははは」
良かった。
僕にもちゃんと迎えが来たみたい。
人間界での両親探しの間、見つかるまで一緒にいてくれる人…と魔物。
人間と魔物は共存できる。
少なくとも、この2人はまるでそれが当たり前かのように一緒に暮らしている。
人間の世界で、魔物がもっと肯定されたら。
僕たち家族は幸せになれたのだろうか。
タイムスリップした過去の世界で、そんな世の中を作ったら。
僕たち家族は幸せになれるだろうか。
ユーゴ
「さ、いくぞ。荷物持つよ。」
ジェシー
「僕が持つー!
ユーゴにはこんな重い物持たせらんない!」
ユーゴ
「え?なんで?
ちょっとよくわかんない。」
ジェシー
「シゲちゃんが言ってたよ!
好きな子に物持たせたらダメだって!」
ユーゴ
「俺は男だから別にいいのよw」
ジェシー
「ダメー!
僕の方が大きくて力持ちだから持つの!」
ユーゴ
「大きくて力持ちのヒーローはいざという時の為に両手あけておけ!」
ジェシー
「そしたらユーゴが荷物持って〜、
僕がユーゴをお姫様抱っこで移動」
ユーゴ
「それ絶対やだ!
お前俺の話聞いてたか!?」
…これからの毎日が楽しみだ。
ユーゴ
「や〜め〜ろ〜!」
ジェシー
「軽っ!
また痩せたでしょ!!
ちゃんとご飯食べなさいよ!」
ユーゴ
「食ってるだろ!
お前だって毎日俺の食事見てるし、俺と同じ食事してんだろ!」
ジェシー
「え?まさか…吐いてるの?」
ユーゴ
「吐いてねーわ!!」
ジェシー
「…つわり?
そうか!ユーゴもしかして僕の」
ユーゴ
「もー勘弁してくれ!」
ダイゴ
「それにしても・・・・・・。
仲良し過ぎね。」
(終)
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