のど飴戦士アイバチャンSeasoe11.5 【同じ空の下、紡ぐ物語〜小話集⑱】


⑱小話〜ブンさんの直訴状











※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は実際のものとは一切関係ございません。
あらかじめご了承ください。

























ブン

「相葉さん!

どういうことですか!?」












相葉ちゃん
「ブンちゃんごめんねー!」









ブン
「ワタクシがイチバン会いたかった、
アノ、魔界の王子がこの町に来ていたなんて!

もっと早く教えて欲しかったグビ…です!」








淳太
「おいブン!落ち着きぃ!」









ブン
「はい坊っちゃま!…




それでですね!
ワタクシは魔界王政に不満が沢山あるグビ…です!」







淳太
「ごめん。
落ち着けないらしい。



ったく、暫くぶりに登場したと思ったら取り乱して…なんやねんw

ホンマごめんな〜。
ウチの実家の使用人が〜。」









ブン
「ワタクシは、魔王のやり方が気に食わないグビ…です!




貧困の解消をしなければ、弱者はいつまでも生活が苦しいままですし、そのせいでこうして人間界にたくさんの魔物が侵略し、人を食べ、他国を困らせているのですよ…グビ…です!」







相葉
「そうだよね、うんうん。」







ブン
「ですから!
マサヤ王子には王位継承権があるのですから!
しかも、第一王子よりも柔軟なお考えをお持ちだと思うのですね。
第一王子は顔がこわいですし!」





#偏見







ブン
「しかも魔王のやり口に賛同しているのですよ、あやつは!

一方マサヤ王子はですね!
魔界のことが嫌いなのですよ!
魔界の嫌なところがたくさん見えているのですよ!
だからといって家出するのはどうかと思いますけど!


マサヤ王子には、王にならないとかホザいてないで、国民の声に真摯に耳を傾け、魔界がより良い世界となるように、魔界の不手際で人間界にご迷惑をかけないように、政治に反映できる国王様へとなってもらいたいわけですよ!グビ!…ですよ!」










淳太
「言ってることはその通りなんやけど、語尾がちょっと気になるわ〜。

一応これでも練習中なんやで。」










ブン
「それで!マサヤ王子は!今どちらに!」










相葉
「ごめんね〜。



もう帰っちゃったの。」










ブン

「帰った!?

魔界にですか?

100年ぶりの実家にですか!?」











相葉
「神奈川県の横浜市に…(笑)



今は基本的に魔力を捨てて人間になってるの。
魔力をお友達に預けてるだけだから、いつでも元には戻れるんだけど。






人間界で、人間の姿で、人間の男の子と一緒に暮らしてて…」








ブン

「なんとぉ!?





それではいつでも会えるグビか!?」









相葉
「いつでも…かわかんないけど。




横浜って結構遠いし、本格的にヒーローになったら家を空けることだって、ねぇ?」








ブン

「・・・へぇ?




ヒーローになる?誰がですか?」








相葉
「あ、実は…じぇすくん…
じゃなくて、マサヤ王子が。



ヒーローになって悪魔退治もすることになったの。



その修行のためにおれのとこ来てて。




あのー、おれの弟子…なんだよね。」









ブン
「…ちょっと何言ってるかわかんないグビ…


魔物、しかも魔界の王子が?
魔物と戦う?




共喰いするってことですか?」










相葉
「食べはしないよ!
人間を傷つける奴は魔物の風上にも置けない!…みたいな。


人間大好きだから。王子は。」









淳太
「マサヤ王子は人間の味方。
人間界を荒らしたり、人間を傷つけるのはたとえ同じ種族であろうと絶対に許さない。



ってことやろな?」










ブン
「それは良いですね!」










淳太
「せやから、王政に関わることになった場合には、人間を傷つける行為を厳罰化するとか、その原因となる貧困問題にすぐ着手する可能性があるってことやろな?」








相葉
「じぇすくんならやりそう!」









ブン
「絶対に王になってもらわないと困ります!
私が考える、理想的な国王の姿グビです!




マサヤ王子に直訴状を書いたのですが!
これをお渡ししてくるのでマサヤ王子の住所をぜひこのワタクシに教えてくださいグビ!!」









相葉
「スマホ持ってるから、写真撮ってL○NEで送ったら?」








ブン

「王子が!?スマホを?」









相葉
「だからいつでも連絡でき…」








ブン

「連絡先教えてください!






それで、あの、、、

ははははは!」











淳太
「ブンが壊れたw」









相葉
「先に電話してみるね。






(⚡︎⚡︎⚡︎プルルルルルルル…




ガチャッ…)










ブン

「マサヤ王子!!」












⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「は、はい???」









淳太
「急にすいません!
おい!ブン!」









相葉
「あれ?ユゴちゃん?」







⚡︎⚡︎⚡︎シンタロー
「シンタローもいるぞぉ!」








⚡︎⚡︎⚡︎ダイゴ
「ダイゴもいます!」












相葉
「じぇすくんは?」










⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「ジェシーは今列車の中で寝てました〜。



もしもの時のために俺は起きてたんですよ。」







⚡︎⚡︎⚡︎ジェシー
(zzZ〜zzZ〜)









⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「叩き起こしますか??
コイツいびきかいて爆睡なんですよね。」









ブン
「な、なんだこの人は!

一国の王子を成人前のヤングネームで呼び捨てにするとは馴れ馴れしい!



しかも叩き起こすだなんて!

恥を知れ!恥を!」











相葉
「こらこら、じぇすくんの大切な人だから…」







ブン

「た、大変失礼しました!

御無礼をお許しください!グビ!です!


まさか貴方様が王妃殿下の候補の方だとは思わず申し訳ございません!」








⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「なんかちょっと語弊が…

結婚と、XxXX以外は何でも出来る友達です!笑笑」








⚡︎⚡︎⚡︎シンタロー
「他は大体してるんだけどね〜!
キスはしてるよ!」







⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「やめろー!笑笑

あのー、でも結婚はしないって2人で話し合ってそういうことになったんで〜。」










ブン
「マサヤ王子は失恋してしまったのですか!?

そうなのですか!?




大変だ、これはスクープだ!

週刊イービルもキャッチしてないネタを掴んでしまった!

イービル砲にご注意くださいませ!」








⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「あ…はい!気をつけます!

週刊イビル?」









淳太
「週刊イービル!

evil=悪ってことやな。
魔界で1番有名な週刊誌やで。
スクープのためならやることエグいって噂の。」








⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「あ、今ジェシーに動きがありました!
おい、ジェシー!電話!」










ブン
(ドキドキドキドキドキドキ…)














⚡︎⚡︎⚡︎ジェシー
「(スヤスヤ…)」








⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ

「起きない〜!!!





ただ寝返りうっただけだったみたいですー」










ブン
「がっくし。



私の直訴状、届くんでしょうか…」








⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「直訴状?」














相葉
「ブンちゃんが直訴状書いたんだよね。

それ画像で送るから、じぇすくんに読んで貰いたいの!」













⚡︎⚡︎⚡︎ユーゴ
「わっかりましたー!
言っておきます!」









(ピッ!)










ブン
「緊張する。
直訴状読んでどう思うグビかな?











えーい!!!









(ピュン!)










相葉
「なんて書いたの?」










ブン
「クチビルゲ魔界文字が読めるかどうか心配だったので、日本語で書いたのですよ。

おそらくマサヤ王子は魔人文字を常用してると思われるので。


共通言語の方が良いかなと思いまして。










-ズドン・マサヤ・ジョージ 第2王子様

貴方の、この世界ほど大きな心の広さに尊敬の念を込めて。


ワタクシは魔界の貧しい家庭で育ったクチビルゲです。幼少期の食糧は毎日ごく少量のマカイイモムシの幼虫を母に素揚げしてもらって1〜2匹食べる生活をしてまいりました。
もちろん、学校へは通えませんでした。

成人する少し前からは、西の貴族様のお屋敷で奉公して参りました。
裕福な貴族様の家庭ではこんなワタクシを大切に雇っていただき、食事は3食保証、自宅への仕送りが可能となる程の収入をいただいておりました。
そして、坊っちゃまの使わなくなった教科書を頂いて独学で勉強し、ここまで文字を書けるようになりました。

ワタクシの今の生活があるのは、ひとえに奉公先の貴族様の家庭の温かさ故です。
王政からは一切恩恵を受けておりません。

今の幸せな暮らしは、ワタクシが奇跡的に貴族様の元へ来られたが故だと思います。
ワタクシは数少ない幸せの切符を勝ち得たのです。


それでは、ワタクシ以外の貧しいクチビルゲはどうしているのでしょうか?


不幸せで不健康な生活を続けているでしょう。
人間を平気で傷つけ捕食している者もいるでしょう。


本音を言えば、ただ貧しいだけ、お腹を空かせただけの理由で人間界に来るという仲間も見てきました。



でも、どんな理由があるにせよ、やはり他国への侵略や捕食行為はよろしくないと私は思います。
人間界の皆さんは素敵な方ばかりです。
そんな人間の皆様が悲しんだり傷つくのは私もつらいです。
人間界・魔界の人たちが平和に暮らしていける未来を作っていくべきであり、まず魔界の貧困問題を解消することで変えていける未来があるとワタクシは思います!

それをできるのはマサヤ王子、あなたしかいないと私は思うのです。

貴方様が国王になること、そして世界を平和に変えていくことを願っております。




敬具。










相葉
「直訴状なのにすごく優しいね。
ブンちゃんらしい。」







ブン
「王子に伝わるでしょうか?」







淳太
「大丈夫やて!心配いらん!」











-1時間後、数枚にわたってその直訴状を写した写真の隣に既読の文字がつきました。

しかし、一向に返事が来ません。

ブンさんはドキドキしながら返事が来るのを待っていました。








その頃、横浜へ向かう列車の中では…







ジェシー
「ヒィィィィ〜。」








ユーゴ

「ジェシー頑張れ!

はい、次のページ!
ひらがなに変換したぞ!」





ジェシー
「酔ってきた〜」





ユーゴ
「俺も〜」






シンタロー
「お前ら〜、止まってるぞ〜!」








ダイゴ
「ユーゴくん!ここ、ちょっと違います!」








ユーゴ
「本当だ!"イ"が足りなかった!



マカイモムシじゃなくて、マカイイモムシだな。」








シンタロー
「元気出そうな芋虫だな!ハハハ!」










ダイゴ
「あとこれ、奉公は"ほうこう“だと思います。


"ぶぎょう"(奉行)になってます。」










シンタロー
「ユーゴ、魔界の子に漢字教えて貰ってんじゃん!笑笑


ほらぁ、次のページも書けたぞぉ〜!」








ユーゴ
「おい、ここ漢字!

"ワタクシ"って、元からカタカナで書いてあるのに漢字に変換しちゃってんじゃん!」








シンタロー
「マジだ、うっかりしてたよ!
これ、ジェシー読めない?」









ユーゴ
「コイツぜってー読めねぇわ〜。」







ジェシー
「あと何枚?
ふぁぁぁ〜〜〜〜〜。」








ユーゴ
「おい、寝るなよ!
ちゃんと読んで返事送ってからにしろ!」










-学校へ行っていた裕福なジェシーは、貧しくて学校へ行けなかったブンさんよりも圧倒的に漢字の読み書きが苦手でした。


寝ぼけ眼をこすりながら仲間たちにひらがなへ翻訳してもらった長文の直訴状を読む、ジェシーなのでした。









(終)

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