のど飴戦士アイバチャンSeason11.5 【同じ空の下、紡ぐ物語〜小話集㉙】


㉙小話〜生活とは







※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は実際のものとは一切関係ございません。
また、更新の順番は時系列通りではありません。
あらかじめご了承ください。














ユーゴ
-師匠たちの元での訓練が終わり横浜に帰ってきた。




ヒーローになるためには最終試験があるらしいけどまだだいぶ先らしい。






だから、本格的なヒーローとしての活動はまだ。








これ、1週間の出来事を5ヶ月かけて投稿されてたんだっけな?
作品の特性上だいぶ長いように感じるけど、帰ってきてみると何にも変わっていない日常が待っている。







大学はもうすぐ卒業なんだけど、単位が少し足りなくてリモート授業とレポートの嵐に追われている。







訓練前と変わらない、日常に戻った。















唯一変わったのは、俺たちが訓練先の町から魔物の子どもを連れて帰ってきた、ということ。







魔物の子ども、と言っても。
正しくは、

人間と魔物のハーフだし、
60歳なんだけど人間換算で6歳らしいし、
それでも人間の子どもと比べたら成熟していて20代くらいに感じる子。


本当にちゃんとしてる。
2500歳、人間換算で25歳(計算式謎、250歳じゃないらしい)のジェシーよりしっかりしてる。










ただ、人類は魔物についてわからないことがたくさんあるから体質をかなり詳しく調べるって、検査入院しているところ。



ウチには少し荷物を置きに来ただけ。








だからやっぱりまだ何も変わらない。







ただ、いつでも迎えられるように準備はしなきゃ。








1人で住むには広かったこの部屋は、ジェシーと2人で暮らし始めてから少し狭くなった。
ジェシーは身体が大きいし物が多いから。
あと片付けしないし。








ユーゴ
「おいジェシー!物の量減らせよ!
ダイゴの物置けるようにしないと!
クローゼット、ここ全部空けよう!」







と言うと気だるそうな声が返ってくる。









ジェシー
「えぇ〜!こないだ片付けたんだけど〜!」









しょうがない。
俺のもの減らすか。
もう減らすものもないんだけど。









ジェシー
「え、この服どうすんの!?」










ユーゴ
「もう着ないし古着屋さんに持っていく〜」










ジェシー
「イヤだ〜!
ユーゴこれ似合っててかぁいいのに!」











ユーゴ
「あのー、俺はこの辺全部もういいかなって。

ほら、俺、悪魔よけでジェシーの服とか上着借りるだろ?
だから服に困らないというか…」











ジェシー

「イヤだ!


そうだ、今日これ着てってよ!
すごく似合ってるんだもん!!」











いつもこんな感じだから、俺の片付けもままならない。
そうこうしてたらバイトに行く時間になって。







ユーゴ
「バイト行かなきゃ。
お前、俺が居なくても片付け出来るよな?」










ジェシー
「寂しすぎて無理!HEHE!

さ、行こっか!」










って、まだ大学やバイトの送り迎えをしてくれているジェシー。

俺に関して心配性すぎるジェシーは、前に俺が変質者に絡まれたことあるからかなり気掛かりらしい。





悪魔よけのためにジェシーのコート着てるし、
マーキング?
俺はジェシーのものと言わんばかりにフェロモンかけられまくっているらしく魔物が襲いにくる確率はかなり下がっているらしい。



ただ、ジェシー。
敵は人間の中にもいると思ってるらしい。










これ、就職しても続かないよな?
外回り全部ついて歩くとか言わないよな?

っていう俺の心配。














話は戻るけど、家族がもう1人増えたら生活費が増える。
ダイゴはこないだまで仕事をしていたから少しはお金持っているはずだけど、まだ子どもだから。
生活費を出して貰いたいだなんて思えない。







このご時世、バイト先が24時間営業をやめた影響もありシフトを入れるにも限界があるけど、自分が養ってあげたいという気持ちで無理言ってシフトを増やしてもらった。










@バイト先のファストフード店









バイト仲間・阿部
「ユーゴ?大丈夫か?」










ユーゴ
「え?阿部ちゃん?なんで?」










阿部
「最近俺のシフト全部に居るような気がしてさ。」










ユーゴ
「あぁ、確かに!
昨日も一昨日も一緒だったね!」









阿部
「ほら、目の下にクマ出来てるし。」








ユーゴ
「え?クマさんいる?




うわぁ〜。
ホントだ。いるいる。クマさん🧸」











鏡を見ると両目の下にはクッキリとクマさん🧸




全然気づかなかった。
最近寝不足だったもんな。
大学の授業にバイト、帰ったら晩ご飯の支度して、洗い物して、家計簿つけて、家片付けて、睡眠時間削ってレポート書いてるような生活。





それが毎日。毎日。続いてる…。
空き時間がないようにバイト詰め込んでるから、休める時間はおろか、睡眠時間さえあんまりない。













阿部
「なんかお金で困ってんの?」









ユーゴ
「まぁね、あったら安心かなって。
やー、クマさんどうしよう🧸

こんなんでスマイルしてもお客さんハッピーになれないよね〜。」













阿部
「いつものお客さんが何て言うか…」











ユーゴ
「あー、あの人は大丈夫。」






いつものお客さん、とはジェシーのこと。
さっきは全然気づいてなかった。

まぁ、家の中は節電して暗かったからかなぁ。
でもクマさんがあることには変わりないから、明るい店内ならバレるかもしれない。
アイツにバレたらちょっとめんどくさい。





なんとか隠せないかな。












阿部
「しょっぴーなら隠せるかもしれない!」










しょっぴー、とは、バイトの先輩・翔太くん。


美容オタクで化粧品をたくさん持ち歩いてる。
たまたま一緒のシフトなので相談してみたら、すぐにクマさんを隠してくれた🧸









翔太
「隠しただけで、消したわけじゃないよ。
あんまりこすんないようにして!」








ユーゴ
「翔太くんありがとうございます😭
助かりました!!」










とりあえず一安心。












ユーゴ
「いらっしゃいませ!」










ジェシー
「HEHE、会いたかったよ!
スマイルください♡」









(にこっ) 








ジェシー

「ずきゅーん!」



















ジェシーは今日も無事に俺のスマイルにぶち抜かれながらチーズバーガーを食べて帰っていった。





って、この光景。
実は阿部ちゃんと翔太くんも大好物なんだとか。






難所は超えて、夜8時までのシフトを終えた。
ジェシーがいつも通り迎えに来てくれたけど、その時もバレなかった。








良かった。今日1日終わった…。







もう一安心。






家に帰って。
風呂に入って。顔を洗って。

ハッと俺は気づいてしまった。






翔太くんの魔法が消えてしまう。
慌てて顔を見るとやはり目の下にはクマさん🧸
まだお山に帰ってなんかいなかった。








『隠しただけで、消した訳じゃない。』








そうだ、その通りだ。
俺は誰もクマさん🧸に気づかないのをいいことに油断してしまった。






お風呂で頑張って目元を温めたけど。
それでも尚、俺の目の下に居座り続けるクマさん🧸



そうだよね、こんなんじゃ帰ってはくれないよね。
前髪を最大限に下ろして凌ぐことにした。






夜、最近ジェシーは俺より先に布団に入る。
俺は、家計簿つけてレポートを書かないといけないからジェシーより寝るのが遅くなった。








ジェシー
「今日は早く寝よう。」







ユーゴ
「うん、なんとか早く終わらせられるようにするわ。頑張る。」










お金が足りないと時間も足りなくなる。
貧乏暇なしってこういうことなのかな?









深夜2時にさしかかると寝室のドアが開いてジェシーがこちらを見ている。













ユーゴ
「ジェシー、なした?」









ジェシー
「ユーゴがベッドに居なかったから。
まだ寝れないの?…心配で。」










ユーゴ
「もうちょっと。ジェシーは寝てな?」












ジェシーは沈黙したまま俺のことを見つめている・・・。















あ、マズイ!






レポート書くのに前髪が邪魔で留めてしまってた!








案の定、ジェシーが悲しい表情をしてこちらに駆け寄ってくる。










ジェシー
「ユーゴ、お願い!早く寝よう!今すぐ!
目の下にクマ出来てる!」










ユーゴ
「今急に出来たわけじゃないからビビんなって。」










ジェシー

「え?いつから?

僕、気づかなかった…

ごめんね、ごめんね。

何でこんなことに…

最近忙しいからっ!

あ、バイト増やしてるよね?

そのせい?

何でバイト増やしたんだっけ?

えっ?えっ?

学校の宿題??」









混乱するジェシーをなだめながら事情を説明した。



多分こいつ、地位も名声も金もある家で生まれ育って不自由なく生きてきたから、金の大事さなんて分かってない。









ユーゴ
「生活するのにお金がかかるのって知ってるか?」









ジェシー
「うん、ハンバーガー買う時払ってる。」









ユーゴ
「そう、ご飯を食べるのはお金がかかる。
今晩食べたオムライスだって、お米とか卵とかケチャップとか中に入ってた野菜も、全部スーパーで買ってきてる。


この家も大家さん、ここの場合はフーマなんだけどさ。
この部屋もフーマから借りてる。
ただで借りるわけにはいかない、毎月お金払ってんだ。


電気使うのも、蛇口ひねって水出すのも、ガスコンロで火をつけるのも。
風呂にお湯溜めて沸かすのも。

全部使った分だけお金かかってんだ。
1ヶ月分ずつお金を払ってる。」









ジェシー
「それは知らなかった。」











ユーゴ
「電気とかガスとか水道とか、使うのは俺だけじゃないよな?

ジェシーも使う。



人数が多ければ多いほど使う量が増える。
そうすればかかるお金が増える。




支払うためのお金は、俺がバイトして、その対価でお金を毎月貰ってる。






学校に行くのもお金はかかってるけど、それは俺の両親が払ってくれた。
奨学金って言って、毎月お金を借してくれてる人がいて、そのお金も使ってる。






今はまだ大丈夫、大丈夫なようにやりくりしてるし、大学卒業して、就職したらもう少し貰えるお金は増えると思う。



でも、もうじきかかるお金が少し増えるだろ?
もう少しでダイゴが帰ってくるから。
大学卒業したら、今まで借りてた奨学金だって今度は返していかないといけない。
その時に困らないようにしておきたいんだ。




子どもにお金払わせたらかわいそうだろ?
不自由なく暮らせるようにしてあげたいんだよ。」









ジェシー
「ユーゴ…。」









ジェシーは俺の名前を呟くと寝室に戻り、すぐに帰ってきた。








財布を2つ持って。












ジェシー
「僕のお金使って!
ユーゴから貰ったお小遣い!
まだまだ残ってるよ!」







ユーゴ
「でも、それだとジェシーが困るだろ?
チーズバーガーが買えなくなる。」









ジェシー
「こっちも使って。
こないだ数えたら5万ゴールド持ってたから。




このお金があれば少しはユーゴもラクできる?」










そう言って取り出したのは魔界のお金。
小さな純金の粒で1粒100円相当。
金の価格変動があってもお値段変わらないんだとか。
5万ゴールドってことは、500万円相当。









ユーゴ
「お前の魔界のお金って。
国のお金なんだろ?
日本でいう税金みたいな。
魔界の人たちが汗水垂らして払ったお金だと思ったら。使いにくいわ。


しかも、ゴールドを換金できるかもしれないけど、日本円をゴールドに替えられるのかわかんない。
これがなくなったらジェシーは魔界に帰った時に困る…」










ジェシー
「大丈夫、魔界は国民からお金取ってないから!
お金持ちからの賄賂と違法なことする貴族からの罰金だよ。


魔界でお金使う時はdaddyから貰えるから!これ使って!
僕は、ユーゴのこと守りたい!」








俺に真剣な眼差しを向けるジェシー。
両手を顔に添えられ、親指で目の下を優しく撫でる。









ジェシー
「僕も、お仕事する!」








ユーゴ
「え?」









ジェシー
「僕も仕事してお金稼ぐ!
ヒモ男やめる!!」









ユーゴ
「お前、履歴書になんて書くんだよ。
学歴は誰も知らない魔界の学校だし。
年齢2500歳は嘘くさいし。
2500歳で職歴なしは不利だし。

ましてや人間じゃないなんて言ったらビビられるだろ?」







ジェシー
「え?そんなもんなの?」








ユーゴ
「うん、素性の知らない奴なんて雇ってくれないよ。


フツーの人間の俺だって就活大変だったんだぞ。」









ジェシー
「頑張って探す!
だからユーゴは安心して!
今まで通りの生活に戻していいから!
早く寝不足治して!
身体をゆっくり休めて!



ユーゴが無理して倒れちゃったら、僕…
僕…。(泣)」









ユーゴ
「わぁった、泣くなって!」









ジェシー
「僕より早く死なないで!(泣)」








ユーゴ
「無理に決まってんだろ!
あと何千年生きんだよw」











ジェシーのやる気に火をつけてしまったようだ。














(終)

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