のど飴戦士アイバチャンSeason11.5 【同じ空の下、紡ぐ物語〜小話集㊲】
㊲小話〜ゴシップ
※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は実際のものとは一切関係ございません。
あらかじめご了承ください。
「売れ行き好調だねー。
このトップ記事最高だよ!
"王室失脚!人間界で遊び呆けるマサヤ王子"
キミ、またスクープ頼むよ!」
週刊イービル。
僕は、王室に批判的で毎週王室関連の大スクープを挙げると有名なこの雑誌で記事を書く記者だ。
雑誌の売上は好調、最近は調子が良くてスクープを連発出来ているから、毎月100ゴールドくらいは収入を得られている。
これでなんとか1ヶ月食べている。
そして今日は、更なるスクープを求めて人間界にきた。
今月の給料100ゴールドを握りしめて…
金券ショップで換金して1万円に変えてもらったけど、人間界は物価が高い。
しかもすごく広いから、移動と食事、宿泊費で全て飛んでしまいそう。
木の上で休んで、移動は最小限、ご飯は腹5分目くらいでやめておいて、お風呂は公園の水道で…
これでなんとか節約していたけれども、お金が足りなくなってきた。
どうしよう、このまま何も書けなかったら…
(ぐぅ〜…)
こんな切羽詰まった時にだってお腹は空いて。
でもお金が…
なんか目が霞むな。
どうしよう、これなら記事書けない…
「ねぇねぇ、そこの魔物さん。
だぁいじょうぶ?
お腹空いてるの?」
「は、はい。」
「もしかして脱水起こしてるんじゃない?
お水買ってくるね!!」
突然声をかけてきた人。
いや、魔物だ。
この匂い、気配。
しかも、僕が魔物だとわかっている。
ただの人間ならわかるわけがない。
「おまたせー、経口補水液買ってきた!」
ボトルを受け取って飲む。
そうすると、徐々に身体の変な感覚は治まってきて…
そして、目の前の人物に驚いた。
マサヤ王子。
ずっと探し求めていた…王家の人物!
ジェシー
「ついでに、これでよかったら食べる?」
「あ、ありがとうございます!!」
マサヤ王子がコンビニで飲み物と一緒に買ってくれたらしい、鮭おにぎりとサラダ、ゼリーを僕に差し出す。
おにぎりは不思議なパッケージで開け方がわからなかったものの、王子は手慣れた様子で開けて、海苔を付けてくれる。
ジェシー
「これすごいんだよ!
海苔がパリッパリで!
まぁ、それどころじゃないか(笑)」
良かった、助かった…
今月もスクープ出せたらボーナス上げてくれるって編集長が言ってくれてた…
そうしたら両親に美味しいものをご馳走したいって思ってたから。
ここで倒れている場合じゃなかった。
また頑張れるんだ…。
そして、僕は…。
今マサヤ王子の自宅に向かってるらしい…
なんだこれは。
これはどういう状況だ…。
まだボーっとしてるのか、何がどうなってこうなったんだっけ?
ちょっとウチで休んでいきなよ?
って言われたんだっけ?
特大スクープの予感しかないのに…
ボーっとしてちゃ困る!
(ガチャ…)
「お邪魔します…」
ユーゴ
「こんにちはー。
狭いですけど、どうぞ、休んでってくださいね。」
迎えてくれたのは美味しそうな人間。
しかも、魔物…特にマサヤ王子と同じ性別の殿方なら絶対我慢できず嫁にするであろう、めちゃめちゃフェロモンのような匂いがダダ漏れてる人間…
しかも、王子の魔力を持っている…!
そうだ、そういえば王子は魔力を持っていなかった。
だから髪の色が赤くないのか!
いい匂いすぎる…でもダメだ…
マサヤのマーキングが濃い
魔界の既婚者が比じゃないくらいマーキングされてる。
もしかしてこの人が先日お城に来ていたという、王子の婚約者か?
手出ししては確実に殺られる
ジェシー
「ユーゴただいまぁ!
ごめんね遅くなって!」
口当たりの良さそうなものいろいろ買ってきたから食べようね〜!」
食あたり治療後らしくマサヤ王子が家で看病しているらしい。
ただ、本人はすごく元気そう…
うん、普通。
多分過保護
うん、違いない。
ユーゴ
「お兄さん、ずっと外で暮らしてたんですか?
お風呂入れてましたか?
今お風呂の用意しますから、」
ジェシー
「ダメダメ!ユーゴは休んでて!!
僕に任せて!ね?
はぁい、おやすみ〜!」
そう言うと、王子は恋人をお姫様抱っこでソファーへ寝かせる。
間違いなく過保護。
ユーゴ
「もう治ったんだけどなー。
ちょっとまだ食欲ないだけなのに…。」
温かいお風呂に入って、上がったら食事の用意までしてくれていた。
ジェシー
「ユーゴがすぐ動いちゃうんだからー。」
ユーゴ
「俺あんまりやってないんですよ!
魚焼いただけですから!笑笑
あとはジェシーが俺の言う通りに作ったんで!」
人間界でいう、和食っていうやつだな。
ご飯にお味噌汁、焼いたお魚、野菜のおひたし…
「美味しい。
すごく美味しい。」
マサヤ王子すごっ!
人間のご飯作れるんだ!!
#そこは作者も驚いている
ユーゴ
「良かったなー!ジェシー!」
ジェシー
「DAHAHA!
ユーゴの言った通りに作っただけぇ!」
ユーゴ
「思ったより手際良かったから、間に合って良かったです。」
「ありがとうございます。
おかげさまで回復しました。」
ジェシー
「仕事で人間界に来たはいいけど、手持ちが1万円しかなくて節約してたんだって。
1ヶ月1万円は大変だよね。
ご飯節約しても乗り物乗ったらお金かかるし。」
ユーゴ
「職場で出張費みたいなの出してくれたらね〜。」
ところで、気になることがある。
「ところで、お二人はお付き合いされて…」
ユーゴ
「よく言われるんですけどね〜(笑)」
ジェシー
「HEHEHE、友達だよ〜。
ウチの親に魔界に帰って来る気ないならユーゴと魔界で結婚しろとは言われたことあるんだけど。
そうなるとユーゴがこっちの世界に帰って来れなくなっちゃうからぁ〜。
僕も!こっちの世界の方がいいからね〜!」
ユーゴ
「こんなに人間界好きな魔物っていねぇよな。
そんなに魔物の方って見たことないけど、こいつ多分群を抜いておかしいとは思う。」
ジェシー
「なぁんでよー!
これからヒーローになったらたくさん魔物見るからさぁ。
どのくらい人間界好きがいるか数えようよ!」
「ヒーローって、退治屋ですか?
これから…なるんですか?」
ジェシー
「そうそう!
でも安心して!
僕たちは師匠の教えもあって、人間界で悪さする魔物としか戦わないの。
むやみやたらに傷つけないよ!」
ユーゴ
「魔界の魔物さんも貧困で、人間を食べざるを得ない環境に置かれてるのは理解できたから。
魔界の貧富の差をなくして、みんなが栄養のある食料を食べられるようになったら人間を食べる必要がなくなるし、そうすることで人間界も平和になるんじゃないかって思っててて。
ジェシーが王様の権力のあり方を考えながら、そっちも対策してくれるらしいから!笑笑」
「そんな…!
王様にでもならないと難しい…え?
王様!?」
ありがとう。
特大スクープがたくさんだ。
マサヤ王子、退治屋へ
マサヤ王子、王位継承辞退を撤回!
新国王に名乗りを上げた!
でも…もっと書くべきことはたくさんある。
僕が書きたいのは、やりたいのは、この人たちに喧嘩を売ることではない…
ありのままを書きたい。
@数時間後…
マサヤ王子の現在
- 困っている人は放っておけない
- その一環で魔物退治をするヒーローに
- むやみやたらに傷つけないのが教え
- 争いの根幹は貧困問題
- 王様になって解決へ
- 婚約者ではなく、大好きな友達
- 現在、人間界で幸せに暮らしている
この見出して発売した特別号が爆発的に売り上げを伸ばし、週刊誌としては異例の増刷と重版を繰り返し、書籍化までされた。
その上にマサヤ王子の好感度が世間で爆上がりしたらしい。
マサヤ王子、ユーゴさん。
助けてくれてありがとうございました。
いつか大きな恩返しをさせてください。
(同じ空の下、紡ぐ物語。終)
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