のど飴戦士アイバチャンSeason12【第29話】
※これはフィクションです。
登場する人物、場所、団体等は架空のものであり実在のものとは一切関係ございません。
あらかじめご了承ください。
@回想・20年前(続き)
あの日、高熱を出して倒れたおれたちはいつの間にか意識を失っていて。
点呼をとりにきた仲間が見つけてくれたんだと思う。
次に目が覚めた時は部屋のベッドの上にいた。
同期の訓練生
「おい、お前ら起きろ!
寝てる場合じゃないんだ…!
逃げてくれ!」
翔
「んー…どうした。
お前、けがしてんのか。」
生徒
「あぁ。
他のみんなは戦って死んだ奴もいる。
傷病者は今すぐ病院に避難しろと教官からの命令だ。」
翔
「アイバチャン…立てるか?」
相葉
「むり。だるい…おいてっていいから…」
翔
「置いてくわけないだろ、乗れ。
うぅ…。」
訓練生
「ヤッターマン、お前はお前で背負えねぇから代わりに俺が。
熱っ、火の玉みたいだ。
あー。そっか。
体温計測定不能だったんだ。
さっき飲ませた解熱剤も効いてないのか。」
-あとで聞いた話。
ヒーロー協会の3階にあった寮から、階段を降りて1階に行き、外に出て、近くの病院に行く作戦だったんだけど。
救急車を呼んで、重症だったおれだけを外に出して搬送してもらい、2人は応戦する作戦に変更したらしい。
翔ちゃんだって38.5℃だったのに、高熱でビビリの恐怖心がどっか行ったらしい。
それで、おれを外に出して救急車を待っているよう言い残し、2人は1階の屋内練習場に向かった。
相葉
「おいてかないで。」
訓練生
「おま、待ってろって言ったろ!?
歩くのもやっとなのに、どうやってついてきたんだよ!
危ないって…あ、
魔物だ…。」
翔
「ここで暴れてたやつか?」
生徒
「いや、あいつじゃない。
なんか…勉強してるな…」
魔物
「卒論…終わらない…どうしよう。
落第したらまたdaddyに怒られちゃうし。
早く学校卒業して人間界で遊びたいなぁ…。
人間とお友達になりたいなぁ。
…恋しちゃったりして〜HEHEHE!!
人間界で結婚とかしちゃったらぁ〜。
人間界の永住権貰えるかなぁ。
卒論終わったらそっちの勉強しよーっと。
魔本読むより楽しーじゃん♪♪」
訓練生
「でも、あれは魔物だっ。
憎き魔物だ…!!」
魔物
「好きな子には素性を言わない方がいいかなぁ?
ビビられても困るし、出世にキョーミないからってフラれちゃうかもしれないよねー。
HAHA、妄想たのしー♪」
訓練生
「とりあえずお前らはここで待ってろ。
俺が先陣を切る。」
魔物
「人間の言葉たくさん教えてもらえるかな?
シュミの合う子ならいいな。
音楽好きな子だったら一緒に楽器したり…
恋しちゃう前にchuの練習した方がいいかな。
♪歩いて〜走って〜日の光浴びながら〜♪
♪自由に〜人間の〜世界で〜♪」
訓練生
「魔物めー!
仲間の仇だ!
くたばれ!!」
魔物
「HE?ナニナニ?
退治屋さん!?
やだ!やだやだ!
死にたくない!!」
訓練生
「黙れ人殺し!」
魔物
「僕は人を食べない!
わー!!!」
(バァン!)
(ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…)
魔物
「・・・・・・!!
え、どうして。
僕、呪文、言ってない…。
魔法使ったつもりないのに…!
殺しちゃった…」
(ハァ、ハァ、ハァ、)
相葉
「あ、あぁ…」
翔
「クソッ」
魔物
「ごめんなさい、ごめんなさい!
お兄さん…。
あの、僕、そういうつもりじゃなかったんです!
ハッ、そっちにも人間のお兄さん。
お兄さんたち、ごめんね。
怖かったでしょ?
…退治屋さん?
僕のこと殺さないで…。」
相葉
「どうしよう…
今のままじゃ戦えない…
逃げよう…。
あれ、おかしいな。
立て、ない。」
翔
「俺も、さっきから変なんだ。
今回ばかりは逃げ出したくなくてここまできたのに…やっぱり俺は臆病者だ。
手足が震えて動かないんだ。」
魔物
「あのー、大丈夫ですか?」
翔
「やめろ!近寄んな!」
(パシッ)
魔物
「うわ、お兄さん熱い!
すごい熱だよ!?大変だ。
もしかして、こっちのお兄さんもかい?
すごくだるそうにしてる。
あのね。
僕、卒業論文で人間の悲しみとか負のエネルギーを食べるっていうのをやってるんだ。
今お兄さん達は恐怖と悲しみでいっぱいになっちゃってて。
僕のせいなんだ。
だから、その負のエネルギーは全部僕がもらうから。
病院に行くのも手伝うから。
僕のこと殺さないで欲しい。」
翔
「お前の言うことなんか信用できるかよ。」
魔物
「だぁいじょうぶ!まかせて!」
(手をかざす)
哀負食強!
(スンッ!)
魔物
「よし、まずは悲しいエネルギーは取ったよ。
あとは君たちを安全に避難させる。
あ、ちょっと隠れてて。
さっきのお兄さんも。3人で隠れてて。」
相葉
「寺西くん、なんで1人で先行くんだよ(泣)
突っかかって行ってさ。」
魔物
「兄ちゃん、どうしたの?」
魔物の兄
「マサヤ、お前も人を殺したのか?
返り血浴びてるじゃないか。」
魔物
「もう食べちゃったから。
兄ちゃんの分は残してないよ。」
魔物の兄
「人間の匂い、ずいぶん強いな。
でも血の匂いもするか…。
お前もやれば出来るじゃないか。
これでお前も落ちこぼれ卒業だ。」
・・・・・・。
魔物
「ごめんね、お待たせ。行こっか。
あ、身体冷やさないと。」
-そのときの魔物さんは、高熱でダウン寸前のおれたちと、魔法の誤爆で死んだ仲間の遺体を病院に運んでくれた。
おれたちを食べようとすることは一切なく、他の魔物から守ってくれた。
しかもあのとき仲間の遺体も一緒に隠したことで、嗅覚に敏感な魔物に生きている人間は居ないと思い込ませられたのかもしれない。
あの魔物さんの判断で、おれたち2人だけが生き残った。
病院に連れてきてもらったおれたちはすぐに治療を受けられた。
特におれは高熱で危険な状態だったけど、魔物さんが応急処置で
よくわかんない大きい葉っぱ*
を首に巻いてくれたのが良かったらしい。
*デビルフラワーの葉:
魔界で唯一自生する巨大植物の葉っぱ。
表面がヒヤヒヤしていて解熱剤に使えるそう。
因みに、この事件の被害者で遺体が残ってたのは一緒にいた寺西くんだけだったそう。
@現在
相葉
「しばらくは訓練時代の記憶が全くなくて暫くヒーローとしての活動を休んでたんだよね。
少しずつ思い出してきたから活動は始めたものの、当日の記憶だけが今まで戻ってなかったの。
そのときの状況は聞いてたから、魔物がみんな悪いわけじゃないと思って活動出来てたんだ。
それはおれだけじゃなくて、翔ちゃんもね。」
ユーゴ
「その魔物って…。
ジェシーなのか?」
ジェシー
「うん。それ僕の話。
あのときのヒーローのお兄さんって、師匠たちだったの?」
相葉
「そう。
あのときは高熱で意識が混濁してたのと、トラウマ消しの魔法のせいかな?
今まで思い出せなかったんだよね。
今回事件の現場で思い出したの。
あのとき、じぇすくんに出会ってたこと。
助けてもらったこと。
じぇすくんが思い出したら伝えようと思ってたの。
あのときは助けてくれて、ありがとうございました。」
ジェシー
「HE?
よくよく見たら…そうかもしれない。
大人になりすぎて気づかなかった〜。」
相葉
「もうすっかりおじさんだからね。」
ユーゴ
「すごい縁だな。」
相葉
「ユゴちゃんも知ってるでしょ?
あのとき一緒にいた寺西くん。
おれのとこに弟子入り勧めてくれた。」
ユーゴ
「あのときジェシーとお墓参りした…!
ジェシーが殺したっていうからそうなんだと思ってたけど。
魔法の誤爆だったのか!」
ジェシー
「僕のせいなんだ。」
相葉
「いやいやおれ見てた!
こないだの戦ってる感じ見たら、本当に誤爆なのわかった!
記憶失ってる状態だと、難しい技の名前言って魔法使ってたし。
ズドン!だけで魔法使えると思ってなかったんでしょ?
あのとき技の名前もズドン!も何も言ってないからね。」
ジェシー
「授業サボって魔法のお勉強不足だった僕の責任です!」
ユーゴ
「お前、1人で全部背負うんじゃねぇぞ。」
ジェシー
「うーん、どうしようかなー。
じゃあまた寺西さんのお墓参りついてきて貰おうかな。」
ユーゴ
「そうだな。退院したら行こうか。
ごめんな。俺、何も出来なくて。
ジェシーが記憶失ったとき、お前の気持ちがわかった気がしたんだ。
俺が記憶失ったとき、お前どういうこと考えてたのか。
しかも、俺も記憶失ったことあって、今回のお前の気持ちはわかるはずなのに。
何も力になれなかった。」
ジェシー
「そんなことない!
僕はユーゴがそばにいてくれて心強かった。
僕の方こそ、あのときのユーゴの気持ちが今になってわかった。
本当にごめんね。
僕、ダメだなぁ。」
ユーゴ
「そんなことねぇよ。
記憶失ってても俺の看病してくれてたじゃん!
お前いい奴過ぎだろ!」
ジェシー
「せんせぇ?
僕たち退院出来る?
ダイゴ探しに行きたい!」
卓巳先生
「怪我も声も記憶喪失も何も全部治ってるからもう退院していいんだけど。
ダイゴくん見つかるかわからないよ?」
ユーゴ・ジェシー
「絶対に見つけます!」
相葉
「おれも手伝うね!」
ユーゴ
「あの、もしかしたらこっちで消えちゃってたとしても、魔界との繋がりが強い町の方に行っちゃう可能性もあると思うので、あちらを念入りに見ててもらえると助かります!」
相葉
「そうだね、あの町は本当に謎だらけだからね。」
ユーゴ
「よし、行くぞ!」
卓巳先生
「早っ!
荷物まとめてあったのね💦
退院処方は…痛み止めと湿布くらい出しとくよ!
あ、早朝は会計まだ開いてないからあとで来てね。」
ユーゴ・ジェシー
「はーい!」
(ガラガラガラガラ…)
ユーゴ
「あ、ジェシー。
俺さ、まだ返事してなかったな。」
ジェシー
「HE?返事って?」
ユーゴ
「あのー、先々週なのかな?
俺に言ってくれたじゃん。。。///」
ジェシー
「HA!返信不要デス!」
ユーゴ
「え?言わせてくれねぇの?」
ジェシー
「HE?」
ユーゴ
「あのー。
1回しか言わねぇから。
ちゃんと聞けよ。
俺さぁ・・・・・・
ジェシーのこと・・・・・・。」
ジェシー
(ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・)
ダイゴ
「あぁ、戻って来れた…
ユーゴくんもジェシーさんも心配してるだろうな…。
はぁ、大変なことになっちゃった…
手伝ってもらわないと…。
病室にいるかな?
また違うとこに戻ってきてたら…」
ユーゴ・ジェシー
「あ…
あぁー!!!
居たぁ〜!!」
(ガラガラガラガラ)
相葉
「どうしたの?」
卓巳先生
「だ、ダイゴくん!?
思い出した…。この子だ。」
ユーゴ
「ダイゴ!
心配してたんだぞ!」
ダイゴ
「ユーゴくん!ジェシーさん!」
ジェシー
「ほらぁ、ジェシーって呼んで〜!」
ダイゴ
「ジェシーさ…ジェ、シィ…シー
ユーゴ
「無事で良かった…」
ダイゴ
「うぅ…。」
ユーゴ
「大丈夫か?怪我はない?
すすだらけだぞ。
先生に診てもらおうか。」
ダイゴ
「怪我はもう治ったんで、僕は大丈夫なんですが…
来週に続きましょう!」
相葉
「そう言うパターンあり!?」
(続く)
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